ジョン・P・コッター氏は、ハーバード・ビジネススクール教授で、リーダーシップ論や企業変革の世界的権威です。1981年34歳の若さで終身教職権取得をし、ハーバード大学の歴史の中で 最年少記録で教授となりました。彼が説く組織変革の8段階は次のとおりです。
1.危機意識を高める
2.推進チームをつくる
3.ビジョンと戦略を立てる
4.ビジョンを周知する
5.メンバーが行動しやすい環境を整える
6.短期的な成果を生む
7.さらなる変革を進める
8.新しいやり方を文化として根づかせる
1・危機意識を高める
彼が説く組織変革プロセスの第1段階は「危機意識を高める」ことです。すなわちトップ自ら危機に関する情報を社員へ伝えることにより組織全体の危機意識を高めることが第一歩です。
組 織変革の重要なポイントは、従業員をはじめとした人々の行動を変えることにあります。 行動を変えるうえで何より効果的なのは、人々の心に訴えることです。組織のリーダーであるトップ自らが感じる危機感を社員へ自らの言葉で語ることではない でしょうか。理性に訴える分析を示すのではありません。それよりも心に響く真実を示されたときに、人間は行動を変えるものなのです。
2.推進チームをつくる
コッ ター教授によると、成功を収める組織変革は、80%はリーダーシップにより、残りの20%がマネジメントによりもたらされるようです。すなわちリーダー シップとマネジメントの両方が必要とされるわけです。大規模な組織ほど、その変革のためには少数精鋭の優秀なマネージャーが必要とされるのです。
組 織変革の第2段階は、「推進チームをつくる」ことです。つまり強力なメンバーで構成される変革推進チームをつくり、社員にトップが本気であることを気づか せます。この強力なメンバーにマネージャーが必要とされるわけです。日産自動車の立て直しを引受けたカルロス・ゴーンがクロス・ファンクショナル・チーム を立ち上げた理由もこのあたりにあったのかもしれませんね。
3.ビジョンと戦略を立てる
企業変革のための第3段階は、「ビジョンと戦略を立てる」ことです。すなわち第2段階で編成した少数精鋭の推進チームが自社にとって適切なビジョンと戦略を考え、掲げることになります。 この変革のためのビジョンは明確かつ簡潔でなければなりません。多くの従業員の人口に膾炙するために、ビジョンを示す言葉は短い方が良いのですね。リーダーである企業トップが語る言葉は、こころに響く短い一言が良いと思います。
4.ビジョンを周知する
組織変革プロセスの第4段階は、「ビジョンを周知する」ことです。組織変革のためのビジョンの周知徹底はリーダーの仕事です。すなわちリーダーである企業トップ自らが歩く広告塔となり、 意識して新しい組織文化のシンボルになる必要があります。これは、社内も社外も問わない行動になると思います。リーダーは、全員に目指すべき方向を行動と言葉で指し示すのです。
5.メンバーが行動しやすい環境を整える
コッ ター教授によると組織変革の第5段階は、「メンバーが行動しやすい環境を整える」ことです。そして従業員の自発的な行動を促すことです。 組織には慣性の法則が働きます。つまり従業員の多くは、組織の変化に無意識に抵抗します。それゆえに、少数精鋭の優秀なマネージャーで変革推進チームを編 成しても、リーダーがバックアップしなければ、彼らが抵抗に会うのは明らかです。それゆえリーダーには、既存の障害となる組織構造や人事制度をなくしてサ ポート環境を整える必要があります。
6.短期的な成果を生む
組 織変革の第6段階は、「短期的な成果を生む」ことです。従業員の不安感を払しょくするためには、短期間に目に見える成果を示すことです。具体的には、組織 変革の推進チームに目に見えるように業績改善計画を策定してもらいます。そして改善を実現して、改善に貢献した社員を表彰し、報奨を支給することです。こ のように全ての従業員が成果を目にできるようにします。 短期間で成功すれば、次第にリーダーであるトップの信念が組織の隅々まで浸透し共有されます。
7.さらなる変革を進める
組織変革の第7段階は、「さらなる変革の推進」です。最初の成功にリーダーは酔ってはいけません。第2、第3の矢を放って、従業員全員が危機意識を持ち続ける方法を絶えず探し続けることです。それと同時に仕事の負担を減らす施策を積極的に打ち出して行きます。 過去には妥当であっても、現在は必要ないもの、他の人に委任できるものなどがないでしょうか。業務の取捨選択は、変革推進チームの仕事でしょう。 機会を前向きにとらえ、リーダーは次の変革に着手します。組織変革のどの段階でもそうですが、目に見えるようにするのが大事です。早すぎる勝利宣言を行うのは、失敗への道ですから 要注意です。
8.新しいやり方を文化として根づかせる
組 織変革プロセスの第8段階は「新しいやり方を文化として根づかせる」ことです。組織変革は、企業の分化として根付くまで継続することです。新しい組織文化 が業績改善にどれだか役だったかを全社員に意図的に訴えます。 たとえば、新規採用者の研修では、会社が重視することを生き生きとした物語として伝える。この物語を繰り返して語ることです。昇進プロセスを活用し、新し い文化の行動規範に則って行動できる人物を、影響力と存在感があるポストにつけます。改革推進チームの中からも選抜すると良いでしょう。 組織変革を通して生まれた新しい組織が何をしているか、因果関係を明確にしてなぜ成功しているかを伝えます。組織に新しい文化を根付かせ、矛盾のない行動 をとり、将来に向かって新たな成果を継続して上げるようにします。そしてリーダーは次世代のリーダーの育成と引継ぎにとりかかるのです。
コッター教授の以下の書籍が参考になります。