C型肝炎の治療薬

 日本は肝臓癌の発生率が高い国の1つとされており、その主な原因がC型肝炎ウイルス(HCV)である。従来、C型肝炎ウイルスの治療は、インターフェロン(IFN)製剤、リバビリン(コぺガス、レベトール)の併用療法が推奨されてきた。しかし近年、直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)の使用が主流となってきている。これは、IFNを必要としない治療法で、持続的ウイルス陰性化率(SVR)を向上させている。DAAには、ダクラタスビル(商品名ダクルインザ錠60mg)とアスナプレビル(商品名スンベプラC100mg)の併用、レジパスビル・ソホスブビル配合製剤(商品名ハーボニー配合錠)などがある。

 HCV感染者は、世界で1億7000万人、日本では150万〜200万人と推定され、このうち70%がジェノタイプ1とされている。このジェノタイプ1に上記のDDAが特に有効であることが知られている。さらに2016年11月18日に抗ウイルス薬エルバスビル(商品名エレルサ錠50mg)、グラゾプレビル(グラジナ錠50mg)の2剤が薬価収載と同時に発売されている。適応は「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」である。この2剤の抗ウイルス作用は、HCVの複製や細胞内シグナル伝達経路を調節する蛋白質を阻害することにある。

 さて、C型肝炎患者がDAAによる多剤併用療法の結果として12ヶ月以上SVRを維持できているとすると、生命保険会社の新契約の引受査定はどのように変わるであろうか。実際、大半の臨床試験がDAAによる多剤併用療法の有効性を示唆している。たとえば、ジェノタイプ1のC型慢性肝炎患者を対象としたエルバスビルとグラゾプレビルの12週併用療法のSVRは高く、国内第3相臨床試験では96.5〜97.1%と報告されている。米国でも同様の結果報告がある。  

 新契約の引受査定は、おそらくHCVに対するDAA治療を受けた生命保険申込者をほぼ標準体での引受可能となるであろう。しかし鍵となる要因は、基礎疾患となる肝臓病変の広がりである。肝硬変治療中の患者であれば、なおさら大きな関心事である。というのも、たとえ肝炎ウイルスが存在しなくても、肝硬変は肝細胞癌発症のリスクとなるからである。 

 最大の制約因子は、DAAの膨大な費用である。たとえば、2015年9月に発売されたC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠は、当初1錠約8万円と高額だったことから、国民医療費を圧迫すると批判された。このため、年間売上1000億円超となる薬価を大幅に引き下げる厚生労働省の特例対象となり、16年4月から、5万4796円になった。それでも依然として高額な薬剤であることには変わりはない。

 さらには、この高額な薬剤の偽造品も出回るようになったようである。2017年1月17日に厚生労働省は、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーンで発見されたと発表した。これもハーボニー配合錠が高額ゆえに一儲けしようとした悪い奴らがいるということだろう。食品偽装ならぬ薬剤偽装である。

  ハーボニー配合錠を製造・販売するギリアド社(GILEAD)も、テレビCMで「C型肝炎のない明日へ」と題して最短12週間で飲み薬のみの治療により治癒を目指せると喧伝している。過日、新契約の告知書で、「C型肝炎 4週間の服薬治療で完治」という告知を見た。早ければ4週間でHCV-RNAが陰性つまりウイルスが検出できなくなるようである。

HCV遺伝子別12ヶ月SVR

遺伝子  全症例   肝硬変  慢性肝炎
治療歴無し
慢性肝炎
治療歴無し
93% 91% 93% 93%
86% 77% 88% 80%
75% 68% 78% 69%
90% 84% 88% 93%

(出典:Gastroenterology,151(2016):457-) 

 したがって現在HCV-RNA(-)で肝機能も基準値以内であったとしても、肝硬変の有無が肝癌発生リスクを左右する大きな予後因子であることには変わりはない。つまり慢性C型肝炎の罹患期間を考慮すべきことは言うまでもない。

注)HCV-RNA定量(Log IU/ml)<1.2で検出せず。測定下限(1.2 Log IU/ml)未満で、HCV増幅反応シグナルを検出しない状態をいう。

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