過去メルマガ記事≪厚生年金の適用拡大≫
2015.10.22配信 ASSUMEメルマガ
少し先のことではありますが、平成28年10月より、短時間労働者の厚生年金(健康保険を含む)の適用拡大が始まります。
今回は、このことを考えてみたいと思います。 専業主婦の方のなかには、アルバイトやパート等で働いていたとしても年収を130万円未満に抑えて第3号被保険者になっている人は少なくありません。
そして、この第3号被保険者制度に関しては、「女性の年金権を確立させた」とか、
「子育てなどで働ける環境にない女性のためには必要な制度だ」などの肯定的な意見がある一方で、「保険料を支払っている共働きの妻や独身女性に対し不公平だ」とか、「女性の就労意欲を削いでいる」という批判も多くありました。
今回の適用拡大の基準は、①週労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、③勤務期間1年以上、④学生は適用除外、⑤従業員501人以上 の5つとなっていますので、すべての第3号被保険者に適用拡大されるわけではありませんが、ある程度の影響は免れません。
第3号被保険者制度は、昭和61年の公的年金制度改正時に女性の年金権を確立するために
誕生したものです。
保険料負担は求めず、基礎年金の給付に必要な費用は被用者年金制度全体で負担することになっているのはご存じのとおりです。
一方、厚生年金の保険料の仕組みは、第2号被保険者本人の報酬(標準報酬月額や標準賞与額)によってのみ決められ、扶養する第3号被保険者がいようがいまいが変わりません。
つまり、今回の改正により妻が第3号被保険者でなくなった場合でも、夫の厚生年金保険料は変わりません。
そして、妻が自分の保険料を負担することになれば、一家の公的年金に対する保険料負担は増えることになります。
結婚している女性パート社員には「130万円の壁」があるといわれています。 130万円というのは社会保険料が徴収されるラインですが、このラインを気にしている人は少なくありません。
厚生労働省の「平成23年のパートタイム労働者総合実態調査」では、就業調整 をする理由として「一定額(130万円)を超えると配偶者の健康保険、厚生年金等の被扶養者からはずれ、自分で加入しなければならなくなるから」と回答している人が49.3%もいます(複数回答)。
このように社会保険料のかかる境界の130万円の壁は、所得税の課税ラインである103万円とともに強く意識されています。
現時点(平成27年下半期)の社会保険料の負担は、厚生年金の保険料率8.914%(個人負担分)、健康保険と介護保険が5.79%(協会けんぽの全国平均)ですから、第3号被保険者から外れた人は、実に報酬の15%近くが天引きされてしまうことになります。
今回、130万円の壁の他に、106万円の壁(8.8万円×12ヵ月)ができることになります。 もちろん、従業員501名以上などの条件がつくので全員が該当するわけではありませんが、社会保険料の負担は今後も増える予定(厚生年金の保険料率は平成29年9月には9.15%)ですし、消費税の10%への引き上げも控えています。
黙っていればどんどん手取り収入が減っていきますので、生活防衛のために130万円や106万円の壁など気にせずに「たくさん働いて使えるお金を増やす」という選択をする人も増えていきそうです。「お金を稼ぐ人」が増えるということは、その方に万一のことがあった場合の死亡保障や、老後生活対策のための保障などの保障を必要する人が増えてくるということです。
「短時間労働者への厚生年金の適用拡大」という制度上の変更が、見込客の増加につながることになります。
多くの女性が働くことを選択することで、女性市場の拡大が期待されます。
今後、女性市場へのアプローチを真剣に考えていく必要があるかもしれませんね。