過去メルマガ記事≪働き過ぎは時代送れか?≫
2015.9.10配信 ASSUMEメルマガ
昼夜を問わず、土日祝日返上で働くことが美徳とされた時代はとうに過ぎ去ってしまったことを頭では理解していても、がむしゃらにがんばった過去の自分の姿を思い出し「やっぱり少しでも多く働かないと成功なんか しないよ!」と思っている人も多いと思います。 ただ、この考えを他人に押し付けると少々問題となるかもしれないというのが今回のお話です。
労働基準監督署(労基署)のことをご存じない人はいないと思いますが、最近、その労基署が労働条件等の監督指導を強化しています。その背景にあるのが「残業代ゼロ法案」と言われる労働基準法等の改正の問題です。
この残業代ゼロ法案は、長時間働いても残業代や深夜手当が支払われなくなる制度を新設しようとするもので、働いた時間ではなく成果で労働を評価しようというものです。 しかし、時間管理が中心であった日本の労働管理体制を変えることに各方面からの批判も多く、法案を通すためには労働者の管理監督が適切に行われている前提がない限り国民の理解も得られません。
そのためには管理監督機関である労基署がしっかりと監督官庁として機能している必要があり、そうした理由で労基署の監督指導が厳しくなってきているのです。
監督指導が厳しくなってきたとはいえ、労基署とて、ヒトもカネも余っているわけではありません。
そこで以下の事業場に対して重点的な監督指導を行っています。
・時間外労働が月100時間超と考えられる事業場
・長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場
この2つに該当する先が見つかった場合、ほぼ100%の確率で労基署の監督官が「お邪魔」しにいくと言われています。
というのも、政府の「日本再興戦略 改訂2014」に「働き過ぎ防止のための取組強化」
が盛り込まれたのをはじめ、議員立法による「過労死等防止対策推進法」も平成26年11月1日施行され、政府あげての過労死防止の動きを労基署も受けているのです。
いわゆる「ブラック」と言われる企業を見つけるため、労働者側からの情報の吸い上げにも力を入れており、以下のようなものが実施されています。
・労働基準関係情報メール
(労働基準法などの違反が疑われる事業場の情報を厚生労働がメールで受け付ける)
・労働条件相談ほっとライン
(平日夜間・土日に、誰でも労働条件に関して無料で相談できる電話相談。厚生労働省委託事業)
・インターネットによる情報監視
(インターネットによる監視で過重労働等がヒットしたりすれば、それに対応する仕組み)
もちろん、従来からの投書や電話も有力な情報収集手段であり、様々な手法を活用して厚生労働省や労基署は過重労働を強いる企業等の発見に努めています。
それにより違法な長時間労働を繰り返している社会的に影響力の大きい企業等は、その社名等の公表に踏み切っているようで、アルファベットではじまる靴屋さんが東京地検に書類送検されたのをご記憶の方も多いのではないでしょうか。
もし皆さんが従業員を雇っている立場なら、従業員の方の労働時間には十分配慮していただく必要があると思います。
ちなみに、この手の話は「調べられる側」にスポットが当てられがちですが、実は調べる側も結構大変な思いをしているようです。
労働者に長時間労働を確信的に強いるほどの人は、労基署の人にとっても手強い相手のようで、彼らとの折衝は監督官にとってもかなりのストレスフルな仕事のようです。
そのため、メンタルに不調を来たす監督官も少なからずいるとのことです。
お互いに譲れない一線というものはあるのでしょうが、健康第一でがんばっていただきたいものです。