過去メルマガ記事≪標準報酬月額の引上げと保険提案≫
2015.5.28配信 ASSUMEメルマガ
健康保険や厚生年金などの毎月の社会保険料は、報酬を一定範囲に区分けした標準報酬月額が保険料算出のベースとなっています。
健康保険の場合、1等級(5万8千円)から47等級(121万円)までに分かれていますが、この標準報酬月額の上限額が平成28年度から139万円に引き上げられる予定です。
健康保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて求められます。
協会けんぽの例でいえば、全国平均の保険料率が10%(平成27年度、労使折半)ですから、標準報酬月額が最高等級となる人の個人負担分の上限も60,500円(=121万円×5%)から69,500円(=139万円×5%)へと9千円ほど引き上がります。
40歳以上の方であれば 介護保険料も同時に徴収されるため毎月1万円を超える負担増ということになります。
この標準報酬月額の上限額は、昭和59年に71万円、平成4年98万円と引き上げられ、現在の121万円となったのは平成19年ですので、ほぼ9年ぶりの引き上げです。 標準報酬月額は「月給」をベースにしたものですが、ボーナスが支払われる場合は標準賞与額(賞与の額の1,000円未満を切り捨てたもの) に、先の保険料率等が乗じられて健康保険料が決定されます。
この標準賞与額の上限も、現在の4月〜翌年3月までの累計540万円までの基準額が573万円までへと33万円引き上がります。
標準報酬月額は、最高等級に該当する被保険者数が「被保険者総数の100分の1.5を超える場合」に最高等級を政令で加えることができます。
つまり、高額報酬の人たちが多くなれば上限を引き上げることが可能な仕組みとなっています。
しかし、無制限に引き上げることができないよう、「最高等級に該当する被保険者数の割合は100分の1を下回ってはならない」という抑止基準があるのですが、この基準が今回の法律案では「100分の0.5を下回ってはならない」と変わっています。
このあたりが何ともいやらしい部分なのですが、現在の基準では「最高等級に該当する人の割合は全体の1%以上」が要求されていたのに対し、改定基準では「全体の0.5%以上」でOKとするわけですから、より高い金額へと最高等級を引き上げることが政令つまり厚生労働省の判断でできるようになるということです。
標準報酬月額が引き上がるということは、傷病手当金や出産手当金等の給付も増えるということですので、一概に悪いこととは言いきれませんが、事業主の負担は確実にアップします。
同族の中小事業主の中には、自ら(家族経営者も含め)の報酬を引き下げて社会保険料の負担を軽減し、その分を生命保険料に充当して退職金原資をつくるという保険提案に真剣に耳を傾ける人たちが多くなってくるかもしれません。