過去メルマガ記事掲載≪血液は塩辛い?≫
2014.12.1配信 ASSUMEメルマガ
私たちの体には、水を溜め込むための仕組みがあります。
もともと地球に生物が誕生したのは約38億年前の海の中でした。
このときは自分の回りに海水があるため、水分摂取に困ることはありません。
約28億年前になると、海から陸に上がる生物が現れました。
これが両生類や爬虫類です。
ここで問題が起こります。それは生物は塩分がないと生きていけないことです。
つまり塩分により体液の浸透圧を維持しているのです。
そこで生物は、とても大切な塩分を体の中にため込む機構を持つようになりました。
それがレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(renin- angiotensin-aldosterone system; RAAS)という一連のホルモンです。
乾燥した陸上生活で水分を失わなずにいるための仕組みを持ったのです。
RAASは、主に血圧の調節や電解質バランスの維持に関係し、腎臓で調整されています。腎臓が糸球体へ入る輸入細動脈の血圧低下を感知するとレニンが分泌されます。
レニンは、腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞から分泌されます。
このレニンが、肝臓で作られるアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシノーゲンⅠに
変換します。
アンジオテンシンⅠはさらに、主に肺にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって、アンジオテンシンⅡという物質へと変化します。
このアンジオテンシンⅡが血圧を上昇させる昇圧物質です。アンジオテンシンⅡは、その受容体であるアンジオテンシンⅡ受容体に結合することで、副腎皮質からのアルドステロン分泌、末梢血管の収縮、腎臓の近位尿細管での水とNa+の再吸収を促進します。
さらに昇圧ホルモンであるアルドステロンは、副腎皮質から分泌され主に集合管の上皮細胞の主細胞に作用し、Na+の再吸収を促進することと同時にK+の分泌を促進します。
新しい降圧剤であるACE阻害剤やARBは、RAASを阻害することで利尿や末梢血管拡張をはかり血圧を下げるように働きます。
RAASの機序が分かってきたことで開発された降圧剤といえます。
私たちの腎臓で起こっていることは、Na+の再吸収を促進することで水を再吸収しているというわけです。
腎臓の糸球体から1分間に100mlの血漿が濾過されますが、原尿にあるほとんどの水分は尿 細管と集合管で再吸収されるため、腎臓から尿管を経て膀胱へ出てくる尿の生成は1分間に1ml程度です。単純にいうと99%が再吸収されているわけです。
塩のきいた料理をおいしく思うのも、塩を利用した恒常性維持の仕組みが私たちの遺伝子に組み込まれているからなのかもしれませんね。