過去メルマガ記事掲載≪年金額について≫
2015.2.27配信 ASSUMEメルマガ
少し前に来年度の年金額が決定しましたが、今後長期間にわたって年金額が上がることは期待できません。
マクロ経済スライドという仕組みが年金額の上昇を抑えるからです。
=マクロ経済スライドとは=
マクロ経済スライドは平成16年の年金改革で導入された制度で、年金を受け取る人が長寿化することと、支え手である現役世代の割合が減ることを想定して、物価や賃金の伸びよりも年金額を抑える仕組みです。
なぜこのような仕組みが導入されたかというと、かつての年金制度は5年に一度、財政再計算というものを行って、給付に必要な保険料をその都度決定してきました。
つまり、年金に必要な「給付の額」を先に決め、それに対して現役世代の支払う保険料を決めてきたのです。
極端なことを言えば、保険料がいくらになるかはその時次第だったという訳です。
これでは若い世代がたまったものではないということで、平成16年に「先に保険料」を決め、それに合わせた給付を行う仕組みに変更されました。
これは「保険料の水準固定方式」などという名称でよばれています。
とにかく、この改正によって、国民年金の保険料は平成29年度までに16,900円(※)、 厚生年金の保険料率は平成29年9月までに18.3%(労使折半)に引き上げられることが決まりました。
(※)保険料改定率が乗じられて修正されるため16,900円に確定しているわけではありません。
=マクロ経済スライドは発動されていない=
これにより、 私たちが支払う保険料は毎年確実に引き上げが行われてきましたが、一方の給付を抑えるはずのマクロ経済スライドは平成16年からの10年間で一度も発動されていません。
発動されなかった原因は「もらいすぎ」と言われていた特例水準にあります。マクロ経済スライドについては特例水準の解消が完了したことが確認されてからスタートするルールになっていたのです。
少し前までの公的年金は、物価の上昇・下落に完全に連動し、物価が上がれば年金も上がり、物価が下がる場合には年金も下がるという仕組みでした。
この物価下落の年金額への反映が現実になったのが平成11年度です。
しかし、時の政府は年金受給者の生活に配慮し、特例法により年金額を据え置くことにしました。
年金額の据え置きは平成12年度・13年度も続き、その後いったんは年金額の引き下げは行われたものの、物価等の水準が回復しな いままにもらいすぎの状態が続いていたため、平成24年の民主党の野田政権のときに決まった国民年金等一部改正法により特例水準の解消が図られたのは記憶に新しいところです。
=これから年金の実質価値はどんどん下がっていく=
今まで陽の目を見る機会がなかったマクロ経済スライドですが、特例水準が解消されたこれからはきちんと発動されるようになり、年金額に引下げ圧力をかけ続けていくことになります。
前述のとおり、年金財政の収入である公的年金の保険料は固定化されているため、年金給付の財源を無尽蔵に増やすことはできません。
子どもたちにも将来年金を支払っていける様、大人たちが協力しなければならない仕組みがマクロ経済スライドです。
マクロ経済スライドは「年金財政安定化の 目処」がたつまで長期にわたって実施される予定です。
仮に1%のマイナスが20年間続いたとすれば、20年後の年金額の実質的な価値は8割程に下がることになります。
募集人の皆さまにおかれては、公的年金にプラスした自助努力が従来よりも必要になってきたと訴えることが大切なのではないでしょうか。